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可愛い肉

可愛い肉

〈STORY〉

腹が減って気が狂いそうだった



どこかに肉はないものか
意識を手放してしまいそうになった
その時

空虚な肉が、そこに佇んでいた

一目みて、全てを理解した

これは自分の為だけに生まれて来た
意志無き肉の塊なのだと

「おいで」

手を差し伸べた
肉は醜く肉の先端を震わせながら近づいてきた

なんて可愛い

肉は為すが侭だった
空腹に任せる侭に肉を貪った
肉は歓喜に震えているようだった

可愛い
可愛い
可愛い

この世にこんなにも可愛い肉が存在しようとは

余りに可愛いと思ったので
肉の中心部に埋もれていた子宮に欲望を注いでみた

肉の子宮が快楽に漣めいた
その様子がとても無邪気だったので
子宮もついでに喰らってみた

ところで

両の目から
先程から伝い落ちるこの雫は
一体何なのだろう

肉が失われた

それはそうだ
最期に残された子宮すら喰らい尽くしてしまったのだから

ああ
これから

どうやって空腹を満たしていけばいいのか

不安で、仕方がなかった

「おとうさん」

不意に声が聞こえたような気がして
振り返ってみた

肉が
そこに佇んでいた
空虚な肉が

空虚な肉が最期の瞬間に産み落とした肉の娘だった

ああ そうか

この醜い肉は
腹の空虚を満たす為だけに

何度も何度も何度も
数え切れない位に交わって
飢えを満たす為だけの肉として生を受けていたのか

空虚な肉は娘である
空虚な肉の父は

……

待て

これは

誰の記憶だ?

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